脂肪と聞くとどんな言葉を連想されますか?
表現する言葉は違っていても、連想するイメージはどの方もマイナスイメージのモノを連想される方が大半だと思います。とくに世の中の女性の方々は、脂肪を避けているようなイメージさえあります。
でもなぜ脂肪はこんなにも嫌われるのでしょうか?
そこで、人体にとっての脂肪の必要性と、正しい脂肪の摂り方についてお話をしたいと思います。
Contents
人体の構造
頭脳
脳みその半分は脂肪で出来ている
脳の構成成分は、脳は60%の脂肪と40%のタンパク質と微量のミネラルとビタミンで構成されています。驚くことに、脳みその半分以上が脂肪で出来ています。
では、脳の中において脂肪はどんな働きをしているのでしょうか?
脳みそにある脂肪の役割
脳は、ニューロンという神経細胞の集合体です。ニューロンの先端部分のシナプスが次のニューロンとつながって1000億本のニューロンがネットワークを組んでいます。
ちなみに、人間一人の血管を全て一本に繋ぎ合わせると4万kmの長さになると言われていますが、ニューロンを一本に繋ぎ合わせるとなんと100万kmになります。この膨大な量の神経細胞を一本一本大切に保護するように包み込んでいる成分が脂肪です。
神経細胞は情報のやり取りを電気で行っています。ニューロンやシナプスという電線に電気が走り抜け情報伝達を行っています。電線の周りをしっかり保護してくれる、まるでゴムの役割をするのが脂肪です。
ここでもし脳の脂肪が不足してしまうと、神経細胞をしっかり保護することができず、漏電状態が発生します。この状態が悪化して、脳内の多くの箇所で漏電状態が起こってしまうと記憶能力が低下して、ゆくゆくは認知症へと発展するのです。また、うつ病や子供の動向異常なども脳内脂肪の低下が原因であると近年研究で分かってきました。
人間の生命活動を管理する大事な機関でもある脳にとって、脂肪は欠かせないものということがお分かりいただけたかと思います。
老化を早める原因にも
アンチエイジングに欠かせない脂肪
また、脳に限らず全身の細胞を形成する細胞膜も脂肪で出来ています。脂肪が不足すると細胞膜がしっかり働かず、肌のくすみやシワの原因にもなってしまいます。アンチエイジングの名の下に、美肌を求めてヒアルロン酸含有の美容液を塗布したりコラーゲンを摂取したりしますが、それ以前に脂肪をしっかり摂取して細胞膜を若々しく元気にする必要があります。
健康や美容は、身体の中から出てきます。脂肪が不足すると認知症やうつ病だけでなく、肌のくすみやアンチエイジングにも多大な影響を与えてしまいます。しっかりと脂肪を摂取して脳に限らず全身の細胞を元気に若返らせましょう。
脂肪は大事ですが、脂肪の質が重要
脂肪が人間に必要なことはご理解いただけかと思いますが、間違っていけないのは、脂肪ならなんでも良いというわけではありません。脂肪や脂質について正しく知識を得ることで健康な身体を作りましょう。
積極的に摂取したい油と控えた方がいい油
例えば、脳内の脂肪の内訳は次の通りです。コレステロールが50%、リン脂質が25%、オメガ3が25%です。このような脂肪をしっかりと食事で摂取するのが重要です。また、コレステロールに善玉と悪玉があるように、脂肪にも良し悪しが存在します。
皆さんが日頃から口にしている脂肪の元である油について説明していきます。油の種類によって身体に与える影響の違いをしっかりと理解してくださいね。
飽和脂肪酸(個体の油)
バター、ラード、ヘット(牛脂)、ココナッツ油、ヤシ油、牛や豚の脂身に多く含まれます。安定した油で溶ける温度(融点)が高いため、室内では個体の状態で存在するのが特徴。動物性脂肪のため、全く摂取しないのは問題です。
気をつけたい点
- 摂りすぎると中性脂肪、悪玉コレステロールが増える。
- 血液の粘度が増すため、摂りすぎは動脈硬化の原因になる。
不飽和脂肪酸(液体の油)
不安定な油で低い温度でも溶け、10℃〜20℃の室内では液体の状態で保たれるのが特徴です。不飽和脂肪酸は構造上、下記の数種類に分類されます。
オメガ3
青背の魚、亜麻仁油、シソ油、エゴマ油など
特徴
- 酸化が早いので加熱せず生のまま摂取するのが望ましい。
- 悪玉コレステロールを減少させ善玉コレステロールを増やす。
- 脳や神経細胞の機能に大きく関わっている。
- 中性脂肪を減少させる。
気をつけたい点
- 血液の凝固を抑制する。
- 抗腫瘍効果がある。
- 酸化しやすい油のため加熱調理には向かない。サラダなどに使用。
- 低音暗所に保管して早めに使い切る。
オメガ6
紅花油、コーン油、大豆油、ごま油、ひまわり油など
特徴
- 血中コレステロールを減少させる
- 血圧を下げる効果がある。
気をつけたい点
- α—リノレン酸が体内でDHA,EPAに変換されるのを阻害する。
- 酸化しやすく過酸化脂質を生む。
- リノール酸から作られるアラキドン酸がアトピーや花粉症を悪化させる。
- 細胞が硬くなったり炎症を起こす原因となる。
- 摂取量を心がけて減らしたほうが良い。
オメガ9
オリーブオイル、なたね油、ひまわり油、ピーナッツ油、キャノーラ油など
特徴
- コレステロールを減少させる。
- 胃酸の分泌を調整してくれる。
- 胃腸の運動を高め、便秘の予防になる。
- 他の油に比べ酸化しにくい。
- 欠点が特にない油なので普段使いや調理用に適している。
トランス脂肪酸
マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド、食用精製加工油脂など
トランス脂肪酸の問題点は、その製造過程にあります。油脂に無理やり水素を添加して自然界には存在しない結合をさせて、酸化しない長持ちする油に仕上げたもののことですが、その状態が顕微鏡で見るとプラスチックにそっくりなのです。アメリカでは食べるプラスチックと呼ばれ、2018年の6月までに法的に全面禁止が決定しています。
トランス脂肪酸は植物油の顔を持ちながら、通常の油の酸化しやすい欠点がなく長期保存が可能なためコスト面や利便性が高いため各方面で歓迎され使用されています。
特徴
- 善玉コレステロールを減少させる。
- 悪玉コレステロールを増やす。
気をつけたい点
- 中性脂肪の数値を高める。
- 細胞膜に悪影響を及ぼして新陳代謝に障害をきたす。
- 動脈硬化を促進。
- 心臓疾患のリスクを高める。
- 高血圧のリスクを高める。
- メタボリックシンドロームや糖尿病のリスクを高める。
- 子宮内膜症や不妊症、乳児の体重減少や流産になる怖れがある。
- 認知症につながる可能性がある。
- アトピーや花粉症などのアレルギー疾患
- クローン病
- 免疫機能の低下、がん細胞の促進など、副作用が多い。
トランス脂肪酸の使用例
ぬりもの、オイル系
マーガリン、ピーナッツバター、チョコバター、マヨネーズ、コーヒーフレッシュなど
お菓子系
ケーキ、アイスクリーム、チョコレート菓子、クッキー、ビスケット、クラッカー、菓子パン、ポテトチップス、ドーナツなど
インスタント、レトルト系
カップ麺、インスタントラーメン、レトルトカレー、レトルトシチュー、缶スープなど
冷凍食品系
唐揚げ、コロッケ、てんぷらなどの揚げ物全般、ケーキ、ピザなど
トランス脂肪酸の原材料名をチェック
マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド、植物油、植物油脂、植物性油脂、加工油脂、加工精製油脂など
普段の生活において脂肪は摂りすぎないように注意はされていると思います。今回のコラムでご理解いただけたと思いますが脂肪は体にとって必要不可欠な成分です。脂肪を敵視するのではなく脂肪や脂質に対して正しく理解して、ぜひ自分や家族の健康に役立ててください。